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くらしの健康診断
2024年09月18日 [くらしの健康診断]

知っておきたい「高齢者サポート事業」の現状と課題

不安
みなさん、こんにちは!
司法書士の清水です。
当事務所は2001年開業からこれまで2000人以上の方々の「くらしや住まい」に関するご相談やサポートをしてまいりました。身寄りがない方や親族に負担をかけたくない方々にとって、自分自身で思うように動けなくなったとき、自分の生活をサポートしてくれる人がいないことは切実な問題です。
最近では、病院への入院や介護施設等への入所の際の手続支援、日用品の買物などの日常生活の支援、葬儀や死後の財産処分などを親族に代わって支援する「高齢者等終身サポート事業」を行う事業者が増加してきています。
本ブログでは、高齢者サポート事業の現状と課題を考えてみます。

2023年の調査結果から見える実態
2023年に総務省が公表した初の全国調査では、サポート事業の実態が明らかになりました。
この調査によれば、以下のような問題点が浮かび上がってきました。

重要事項説明の不十分さ
契約内容の重要事項説明書を作成している事業者は全体の21%に過ぎず、多くの事業者が利用者に対して十分な説明を行っていない状況が見受けられます。
特に、複雑な契約内容を理解するための情報提供が不足している点が指摘されています。

契約締結時の第三者の立ち会い不足
契約を結ぶ際に病院や施設の関係者など第三者が立ち会ったのは68%と、残りの約3割は第三者が関与しないまま契約が進められています。これにより、契約内容の妥当性や利用者の意思確認が十分に行われていないケースが懸念されます。

預託金制度の管理不備
77%の事業者がサービス費用の預託金制度を設けていますが、契約者が亡くなった際の履行確認規定がない事業者が23%存在します。
また、21%の事業者では入会金や契約金の返還規定がないため、利用者やその遺族が不利益を被る可能性があります。

成年後見制度への移行の不備
高齢者が判断能力を失った場合、成年後見制度に移行する必要があるにもかかわらず、44%の事業者がそのための規定を設けていません。また、利用者の判断能力が低下した後も、適切に成年後見制度へ移行していないケースも報告されています。

不適切な財産管理と遺言書の問題
一部の事業者では、預託金を法人代表の個人口座で管理したり、現金を事業所内の金庫で管理するなど、不適切な方法で財産を管理しています。
また、利用者の意思と異なる遺言書が作成され、身元保証を条件に全財産を無償で譲渡させるような契約が無効とされた判例もあります。


ガイドラインが策定されました
こうした状況を改善するために厚生労働省では、2024年6月に「ガイドライン」(厚生労働省老健局高齢者支援課 認知症施策・地域介護推進課 老人保健課 令和6年 6 月11日事務連絡 「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」の策定について)を公開しました。
本ガイドラインには事業者選びの際に重要なポイントを確認するためのチェックリストもついていますので、ぜひご参考になさってください。

高齢者サポート事業は、高齢者が安心して生活できるように支える非常に重要なサービスです。
しかし、適切な契約内容や財産管理が求められる点には十分な注意が必要です。
中には、入院や施設入所といった緊急時に困っている方の弱みに付け込み、不安をあおって契約を急がせる悪徳業者が存在することも事実です。
また、契約を結ぶ際に焦りから冷静な判断ができず、内容を十分に吟味しないまま契約してしまい、後で後悔することも少なくありません。
そうしたリスクを避けるためにも、契約を締結する前にぜひ一度ご相談いただければと思います。
第三者の視点から、契約内容が適切かどうかについてアドバイスさせていただきます。